澤上篤人

さわかみ投信株式会社 : http://www.sawakami.co.jp/

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書)

大きな景気の流れをつかみ、不況下で安値で放置されている株価を買い込み、景気回復時に徐々に手放す。下げてきたら買い、上げてきたら売る。これが長期投資の基本スタンス。これは簡単なようで、長期的な売買を見込んでいるからできること。

われわれ長期投資家は経済指標やら相場動向、あるいは企業の業績見通しなどは、すべて無視します。しのかわり、「将来にどんな社会を築いていきたいのか」をひたすら考えて、「それには、こういった方向で経済が拡大発展していけばよいのだろう」と思えることを敢然と実行に移します。p6

SRIと全く同じ考え方。こういう視点は個人投資家だからこそ持てる特権だ。日本でこういう考えを持つ人は本当に一握りだろうな。自分で考えてみれば簡単にわかる。自分の意志をお金で表すことに慣れていないというか、そういう発想ができない。たぶんSRIとか長期投資は簡単には広まらない。

また、2007年10月からは郵政三事業が民営化されて、郵便貯金にたいする国の保障もなくなりました。p22

高齢者にとっても毎日の生活費や税金や社会保障費などの支払い負担が増えていくのは確実というのに、老後の収入の柱となる年金の受取額は、減ることはあっても増えることは期待出来そうにありません。p30

日本の平均年間収益率(1952〜98年)
株式:14.5% 定期預金:5.1% 債権6.8% p35

短期的に見ると下げ相場もあるが、長期で見ると上げている。しっかり分散投資して、長期的視点で投資することができればこれだけの収益が上げられる。

もともと株式会社は、大航海時代のオランダやイギリスなどで生まれました。新大陸に向かう船隊が出資者を募ったことがきっかけです。(中略)船隊が長い航海を乗り切ってもどってくるまでに2〜3年。出資した人びとは船隊の帰港をじっと待っていました。p64

投資を“出資”と考えることができているか、ということは大切だと思う。自分が自分の判断に責任を持って会社に投資する。その分、会社の動向は出資者としてウオッチして、必要があれば総会で働きかける。これが理想だとは思うけど、実際無理だと思う。

大事なことだから繰り返しますけど、「こういった企業ががんばってくれることで、私たちの生活はより豊かになる。だからみんなが売るときに自分たちが買い向かって応援しなくては」というのが、長期投資家にとっていちばん大切にしている行動原理なのです。「どんな社会に住みたいのか、子どもや孫たちにどんな社会を残してやりたいのか」を強く意識して、その方向にお金を投入するわけですね。p79

ここまで言えるのはすげーな…

ちなみに、アメリカでは2005年の投信販売で54%が「販売手数料ゼロ」のノーロード型です。p142

アメリカには過去74年間の運用実績が年12.8%というすごい長期保有型の投信が存在します。キャピタル・グループが運用している「インベストメント・カンパニー・オブ・アメリカ」というファンドですが、そこは堂々と5.75%の販売手数料を徴収しています。投資家は、ICAファンドを10年、20年と長く保有していくつもりだったら、その購入時だけにかかる販売手数料なんて気にしないはず、という論理です。p149

投資というものは自分のお金を自分の意志と判断で、自分の夢や価値観に沿った方向に投入していくことです。預貯金の丸投げ無責任とはちがい、「なんのために」「どんなところへ」自分のお金を使うかがつねに問われます。ここが大事なところです。p185

本当に大事だな、これは。

日本には、お金をどう殖やすかを微に入り細にわたり研究する投資家はたくさんいますが、お金をどう使うかについて真剣に考えている人はほとんどいません。お金は、使わなければ単なる紙切れ、なんの価値もないのです。それなのに、お金を貯めることと短期の値ザヤ稼ぎばかりに目が向く、そんな傾向があるように思います。p186