隈研吾

自然な建築 (岩波新書)

自然な建築 (岩波新書)

利点:場所を選ばない。自由な造形が可能。表層が自由(表面に石や板を貼れば良い。) 欠点:あらゆる場所が均一化される。汎用性により、多様な表面の下にコンクリートという単一の本質を持つように。強固な表面に隠れて、不可視の世界、「表象と存在の分裂」を許容する。不連続な時間を生む。
建築というと、単にモノとしてのデザインや住み心地などしか考えられなかったが、その環境の一部として建築を考えることは、そこで生活する人間と環境との関係を考えることのようでとても面白いと思った。ちなみに、日本の家も江戸時代までは硝子がなかったので、障子で家の内と外を隔てていたらしい。

場所に根を生やし、場所と接続されるためには、建築を表象としてではなく、存在として、捉え直さなければならない。(中略)存在とは、生産という行為の結果であり、存在と生産とは不可分で一体である。どう見えるかではなく、どう作るかを考えた時、はじめて幸福とは何かがわかってくるp14

建築の施工方法とは、単なる工事の技術ではなく、その文化・文明の核心、あるいは今風の別の言い方をすれば、社会のOS(オペレーティング・システム)そのものなのである。(中略)なぜなら、建築が人間と環境とをつないできたからである。p41

一つの場所で成功した同じディテール、同じ工法を、ほかの場所のプロジェクトで繰り返すのは、出来る限り避けたい。(中略)どんな場所でも、同じ建築が出来るならマクドナルドと同じである。二〇世紀の工業製品は、そのようにして、場所を無視し、場所を超越することに、存在価値を見いだした。(中略)しかし、建築は、もっと場所に密着したものでなければならない。p129

日本庭園は新しい造形を提出することによって進化したわけではない。人工と自然との境界線を絶えず引き直すことで、進化を続けた。p172