永山則夫

無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)

読了。500ページあたり以降は共産主義思想についてのエッセイがかなり多く、内容も似てきたのでいくつかのエッセイは正直飛ばした。著者は連続射殺事件を起こした人物。この永山という人が本格的に学問に目覚めたのは獄中であり、この本も監獄の中で書かれたものだと聞いて、興味が出たので借りた。ノートを書き始めた頃は、なぜ自分が殺人を犯したか、という類のことに関心があったようだが、次第に自分を生み出した社会に関する勉強をして、結局はマルクス主義共産主義にいきついている。犯罪者である自分を生み出したのは貧困であり、貧困を生み出すのは資本主義社会だ、という考えが彼に強くあったからである。著者の共産主義思想には俺は興味がわかないが、最近、共産党員が急に増えたり、チェ・ゲバラの映画が話題になったりしているらしいね。共産主義が盛り上がっているのか?

私に欲望の一つを与えると言ったら私は何を選ぶだろう…決まっているのである。もうとうに…無意味な空白的な一年間より目的ある三日間が欲しい、いや、一日でも、一時間でもかまわないのである。p65

死が間近に迫る絶望感は想像を絶するものがある。その中でここまで必死に学問を追究した姿勢にとても感動する。監獄での著者の生き様は、著者が死刑囚であるということを考えても、というより、死刑囚だからこそ強い魅力を感じる。