第四間氷期

第四間氷期 (新潮文庫)

第四間氷期 (新潮文庫)

相当面白い。例のごとく大胆な物語展開と緻密な描写は健在で、一見すると突拍子もないSF小説が、読み進めるうちに「現在の日常的な価値観念」への警告となって現実味を帯びてくる。勝見博士の「第二次予言値」が登場するあたりから最後の「あとがき」に至るまでの強烈な世界観とメッセージ性は圧巻。

世間が幾本の柱で支えられているのかは知らないが、すくなくともその中の三本は、不明と無知と愚かさという柱らしい。p16

日常の連続感は、未来を見た瞬間に、死ななければならないのである。未来を了解するためには、現実に生きるだけでは不充分なのだ。日常性というこのもっとも平凡な秩序にこそ、もっとも大きな罪があることを、はっきり自覚しなければならないのである。p339

勝見博士の言葉を借りれば、この世で一番おそろしいものは、もっとも身近なものの中にあらわれる、異常なのの発見らしいのである。p341