すぐそこにある希望

すぐそこにある希望

すぐそこにある希望

テレビ東京カンブリア宮殿という番組が好きで、毎週録画して見ている。村上龍のことはこの番組の司会者ということで一応、顔は知っていた。けれど、番組での村上龍はあくまで司会者なので、彼自身について小説家ということ以外、実は全く知らないままこの本を読んだが、内容は政治とか経済評論だった。調べてみると、小説以外にも映画も撮っているし、カンブリア宮殿出演やこの本のようなジャーナリストみたいな活動もしている。なんというアグレッシブ。他にも異業種で活躍している人っているけど凄いよな。興味はあっても実際できないだろー。
本に「文脈」という言葉がでてくる。「単線的なある言葉や考え方ではなく、ある個人や共同体の背後にある膨大な概念の塊りのようなもの(p30)」とあるが、村上龍はこの「文脈」に属さない視点から物事を見られる人なんだろうなって思った。まあ結構面白かった。ので小説買った。

現代を象徴するキーワードは「趣味」だろう。ありとあらゆることが趣味的になった。考え方や生き方の変更を迫るような作品は好まれない。その作品を見たあとで何か新しいことを始めたくなるような小説や映画やテレビの番組はほとんど消滅した。また現代のほとんどすべての表現は洗練され、何かをなぞるような性格を持っている。感動の精神的機序をなぞるだけだから考え方や生き方を変える必要はない。タレントがマラソンを完走したシーンを見て涙を流しても、せいぜいジョギングを始めたり募金に応じたりするだけで、その人が生き方を変えるわけではない。p48